根管治療とは

歯は表面からエナメル質、象牙質、歯髄(しずい)の3つの組織から構成されています。このうち歯髄には歯の感覚をつかさどる神経や栄養を送り込む血管があり、これらは歯根の中にある『根管』という管を通って全身の神経や血管とつながっています。

根管治療とは

大きなむし歯や歯が折れるなどの原因によって外部から歯髄や根管内に細菌が感染した場合、それらの細菌や感染物質を神経や血管とともに取り除く治療が必要となります。また過去に神経を取る治療をした根管内に再び細菌が感染した場合にも、再度根管内を清掃・消毒して薬剤を詰める治療をおこないます。

このような「神経を取る治療」「根管内を無菌に近い状態にする治療」を総称して『根管治療』と呼んでいます。

高度な技術が要求される根管治療

高度な技術が要求される根管治療

根管は家屋でいう『土台』であり、根管治療はその土台の修復作業にあたります。どんなに立派な家屋でも基礎となる土台部分が弱いとたちまち傾いてしまうように、根管治療はその成否がその後の歯の寿命を左右するといっても過言ではありません。

その根管治療は数ある歯科治療の中も特に難易度が高く、労力を費やす作業となります。その理由として、以下の項目などが挙げられます。

  • 根管は歯の奥深いところにあり、肉眼で確認することができない
  • 根管の直径は約1mm程度で、さらに湾曲したり枝分れしていたりする根管もある
  • 根管内は繊細で、傷がついてしまうとさらに治療が難しくなる
  • 根管内にわずかでも細菌を残すと、再感染の恐れがある

このため根管治療は歯科医により高度な技術が要求されます。

当院の根管治療

当院では根管治療の精度をさらに高めるため、次の5つの取り組みをおこなっております。

1.必要に応じて『ラバーダム』を使用

根管治療では治療中にも根管内に新たな細菌が侵入しないよう、細心の注意を払わなければなりません。

ラバーダムは個々の歯に装着するゴム製のマスクのようなもので、治療中に患部へ唾液や細菌が入りこむのを防ぎます。当院の根管治療では必要に応じてこのラバーダムを使用しています。

2.治療に時間をかける

治療が早く終わることは患者様の負担も少なく、メリットも多いように思われます。しかしどんなに治療が早くても、その状態が治療後も長く維持されなければ意味がありません。
特に根管治療はその成否が歯の寿命に大きな影響を与えます。当院ではそのような考えのもと、根管治療にはしっかり時間をかけ、精密かつ的確におこなっていきます。

3.『拡大鏡』の使用

歯の奥深くにある根管は、その内部を肉眼で確認するにも限界があります。一方でどんなに手先が器用であっても、実際に目で確認しないままおこなう治療はどうしてもその精度が劣ってしまうものです。そこで当院では根管治療の際に患部を2~6倍にまで拡大する『拡大鏡』を使用し、治療精度の向上に努めております。

4.『隔壁(かくへき)』をおこなう

むし歯によって歯が大きく失われ、歯ぐきの中に歯根しか残っていないケースでは、その多くで『抜歯』を余儀なくされます。なぜなら根管治療をおこなっても予後が悪い可能性が高いうえ、さらに被せ物の維持も難しくなるからです。しかし当院ではそのような歯であっても『※隔壁(かくへき)』をおこない、可能な限り歯を残していくよう努めています。

※隔壁とは

歯の大部分がなくなり根管の入り口が外側に露出しているケースにおいて、その周囲に一時的な壁(隔壁)を設け、治療中に外部から唾液や細菌の侵入を防ぎます。隔壁をおこなうことでラバーダムの装着も可能になるほか、治療中に使用する薬剤が口外へ漏れる心配もなくなります。

5.『MTAセメント』の使用

強い殺菌力や優れた封鎖性を持つMTAセメントは、パーフォレーション(根管とは違う部位に穴が空いてしまうこと)をおこしている根管の治療に有効です。これにより通常であれば抜歯となる歯も温存できるようになります。